文春新書。著者:岩波明、「天才と発達障害」。
中世から現代にいたるまでに存在した天才を題材とする映画、小説、漫画やドラマは国内外問わず多く存在している。そういった作品の中に見る天才たちは、その業績からは想像もつかないような突拍子もない人生を描かれていることが少なくない。現代ではいわゆる発達障害や人格障害に関する知識も世間に広まり、凡人でいられない天才たちのそのような性質について、認識を新たにする機会も多い。そんな今日この頃、上記の本を見つけたので読んでみようと思い読んだのである。
僕が期待していたのは、脳の基質的なユニークさが社会生活における障害として現れ出ると同時に、常人にはとても真似できない特別な才能をいかにして得さしめるのかを科学的に書いてあるようなものであった。しかし、本書はいわゆるケーススタディを通して、どうやら天才には発達障害や精神病的な素質と小さくない相関があるようだと示唆するにとどまっている。歴史上に存在する天才たちが持っていたそのような性質を次々とあげつらっているが、それと彼らが成した偉業との因果関係についてはブラックボックスである。
確かに発達障害などは診察の基準も難しく、信頼できる精度の研究をしようと思うと非常に難しいであろうから、このように多くの例を集めて一般性を得ようという帰納的な手法は有効であると思う。しかし、そのような相関がいかにして現れ出ているのかを、やはり根源から解明し理解したいと思うのが人情というもの。今回得られた様々な天才の事例から発展して、より一般的な研究についても調べてみたいと思う。アメリカではかなりの資本を投入して脳科学の研究が進められているらしいし、今後の動向に期待していきたい。